06-経営力向上

経営を改善して仕組み化する取り組み講座:技術にこだわる姿勢を書き出せば売上が上がる3つの理由とは

 

「良い技術で顧客の役に立つ製品を作る。そのために技術にこだわる。」

その志は「ご自身の胸に秘めているだけ」ということはないでしょうか?きちんと言葉にして、社員やお客様とも共有できているでしょうか?

経営の仕組み化で最初にする大切なことは、志を言語化することです。その志を実現するために事業を行っているわけですから、自分が思い描く自社のあるべき姿を社員・顧客・取引先にもわかるように形にしておくことです。

言語化された志は読んだ人を納得させ、共感を呼び、人を動かす力を持ちます。「自分たちはこの技術であなたの役に立つ」という宣言は、周りから見て立ち位置が非常に明確です。

志を明言することで、具体的には次の3つのメリットが出てきます。

1)安値販売というイメージがつかない

良い技術で良い製品を提供するというイメージを顧客に持ってもらうことで、安値販売を想像されないようにします。逆に「思ったよりは高くない」と思わせることができれば、価格交渉も有利に進めることができます。

2)顧客からの信頼が高まり、困った時に相談される

困った時に相談されるのは最大のビジネスチャンスです。悩みを相談するときは専門家に相談しますから、自社が何の専門家であるかを明確にすることによって相手から相談事を引き出すという効果があるのです。逆に、何の専門かも良く分からない会社に「何でもお気軽にご相談ください」と言われても、積極的には相談できないはずです。

顧客の方から定期的に「何か、新しい技術はない?面白いことできない?」と質問されるようになると理想的です。

3)社員の方向性が固まり、軸がブレない。

理念に基づいて経営方針を定めることで、軸がブレずに、社員が頑張るべき方向性が決まります。

環境の変化が激しい時代、社員は経営者も想定していなかった事態や、指示内容にはなかったことに頻繁に遭遇することになります。そんな時でも、理念が明確であると、現場での判断の指針を理念に求めるようになるため、選んだ行動が経営者の判断と一致するようになります。

一方で、どんなに立派な理念や志があっても、社長の心の中だけにあっては共有されません。ある日突然、コピーライターが作った志を会社案内のパンフレットに記載しても、共感を呼ばないお飾りになってしまいます。

  1. 顧客のどんな問題を解決して、どんな便利さを訴えるのか?
  2. どの顧客の問題を重点的に解決していくべきか?
  3. 志を実現するために会社にはどの程度のキャッシュが必要か?
  4. 技術を磨く投資のために、利益を出すにはどうすれば良いか?
  5. どの技術を磨くことが、最も顧客の役に立つか?

今までの1〜5ステップの中で取り上げてきたテーマについて、全体を貫いて根幹となり、判断基準となるものが志です。これが経営仕組み化の最初の一歩と言えます。

 

「今」儲かるために頑張るのは現場。社長は「いつ」儲かるために頑張るのか?

 

企業経営で最も大切な計算式。

それは「売上–費用=利益」という引き算です。

企業が存続していくためには利益が必要ですから、売上を上げるか、費用を抑えるかの打ち手を取っていくわけです。

しかし、社長の立場では、2つの式を同時に考えなくてはいけないのです。

それは

売上(現在)–費用(現在)=利益(現在)

売上(未来)–費用(未来)=利益(未来)

の2つです。

 

強引に売り込んで現在の売上を立ても、顧客が競合に乗り換えてしまっては未来の売上が減ってしまいます。

現在の費用を抑えるために人件費や開発費を削ると優秀な人が去ったり、技術が陳腐化したりして未来の売上が減ってしまうでしょう。

未来の費用を減らすために工程を変えようとすると、現在の状態では最適とは言えずに費用がかさんでしまい、悩ましいかもしれません。

このように、現在と未来は利益の上では相反することが頻繁に発生します。経営者は常に現在と未来を見比べながら判断していかなくてはなりません。

社員の立場では現在の売上を上げるか、現在の費用を下げるかを考えることで手いっぱい。

現在と未来で相反した状態になった時、どちらの打ち手を選ぶか決断するのは社長に課せられた大切な意思決定です。

経営上の打ち手を明確に示すには

売上(現在)・費用(現在)

売上(未来)・費用(未来)
の4つのうち、どこに影響するのかを打ち手を実行する社員に理解してもらうことが大切です。

社員が「これをやったら、今より費用が増えるのに・・・」「社長の言うことだから仕方ない」と納得感のないまま仕事をしていては、良い成果が期待できません。

未来を見据えた経営判断であることを周囲に見えるように、説明しておくことが大切です。

現在と未来の間で相反する要素が少ないものは、現場で普通に実行できる打ち手です。負の影響が少ない代わりに、成果も小粒に止まるでしょう。

逆に、現在の売上が減る、費用が増えるなどの負荷が大きいアイディアほど、未来の成果も大きいものです。「負荷を取り戻せるくらい、未来に儲かるか」これを判断することが経営者にとっての「やるべきこと」であり、企業経営にも求められていることでもあります。

社員は現在だけを見て、経営者は現在だけでなく未来も見て決定しています。お互いに見ている時間が違いますので、コミュニケーションが無いままでは非合理的なことをやっているようにしか見えません。

仕組みにして社員に託す時には、きちんと未来を見据えた判断をするノウハウも託すようにして行きましょう。

 

専門製品の製造業社長に求められる技術と経営の最適バランス

 

こだわりの技術を持つ製造業社長にとって、技術と経営は両方大切です。

技術を理解していないと、経営判断を誤ってしまうかもしれません。技術投資を判断する上で、技術の重要性を理解していないと投資すべきなのに見送ってしまうケースや、筋の悪い技術に投資してしまうケースなど、判断ミスが生じてしまいます。

逆に、企業経営を理解していないと、技術以外の仕事を軽視してしまいます。製品が素晴らしくても営業・販売がされていないケースやコスト管理がなされずに、利益が出ないケースもあります。

社長に求められる技術と経営の最適バランスとはどのあたりに存在するでしょうか?

私は技術2割 経営8割だと考えています。

そもそも、社長の仕事とは「社員が判断できない意思決定を行うこと」です。社員が吟味して決断できる内容であれば、現場の社員に託しましょう。彼ら・彼女らが働きやすいように環境を整備していくことで仕事が回ります。もちろん、決断内容が会社の方針に合うように指導や教育を行った上でのお話ですが。

社長の仕事=社員ができない仕事とも言えますから、仕事自体は盛りだくさんに積み上がっているわけです。

ここで技術に当てる時間を2割にとどめていることには理由があります。

この考え方は売上高の「ABC分析」に通じます。(02-高い技術と低い腰!専門製品の営業ノウハウ講座

売上高順に顧客企業を並べ、全体売上の8割に達する企業をAランクと分類して重点的に対応すると解説しました。実はこのAランクに該当するのは、取引している顧客企業数の上位2割に過ぎず、上位2割の重要顧客が全体の売上の8割を作っています。

これは20:80の法則とも言われる経験則ですが、費用や在庫など幅広く適用されることが知られています。

技術に関しても同様で、重要な上位2割の要素を知っていれば、全体の8割はカバーできると思って良いのです。

枝葉末節の部分では専門家の社員に聞けば良いと割り切りましょう。技術を理解するのは2割にとどめ、残りの時間は自分の経営を言語化する業務に集中する、というバランスが望ましいところです。今までの5ステップをどのようにやってきたかを言語化して引き継ぐところが仕組み化です。

社長にしかできない仕事に専念しつつ、現場社員を信頼しながら仕事を託し、自分は時々技術に触れるというバランスに留めること。そこに注意して進めて見てください。

まとめ

  • 技術にこだわる姿勢を理念として言語化し、社員・顧客・取引先と共有し、意思決定の根拠とする。
  • 経営者は現在だけでなく未来の売上・費用まで考える。現在に痛みがあっても、未来のために敢えて行うという決定ができるのは経営者だけ。
  • 製造業社長は技術2割経営8割。なるべく現場社員に託し、経営に軸足を置く。

 

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