05-技術力

将来儲かるための種まき!技術を磨く設備投資講座:工作機械やITツールよりも先に投資しなくてはならない、ただ1つのこと

 

  • 貴社のこだわりの技術は「何」でしょうか?
  • 技術を磨くためには「何を」強化すれば良いでしょうか?
  • 「どこに」投資すれば、最も効率よく技術がレベルアップするでしょうか?

一口に技術といっても、いろんな要素から構成されています。

  • ノウハウの詰まった生産レシピ
  • 生産性の高い最新型の製造機械
  • 優秀なサプライヤー
  • 現場で名人技を繰り出す職人さんの腕
  • 一致団結したエンジニア集団の行動スピード

良い技術とは儲かる商品を生み出す源泉であり、他社と競争しても負けない根拠を創り出すものです。

技術の幹となる要素が、最新型の機械への設備投資で導入出来るとしたら、どうなるでしょう?競合他社も設備投資すれば出来るようになるわけです。当然、儲かる製品と分かれば販売会社は他の会社にも売りたがりますから、導入する会社も増えて行き、企業間で技術の差はなくなっていくでしょう。

しかし、企業間では歴然と技術の差が存在します。ある企業には製造できるのに、他の企業では全くできないという事例も多々あります。

そこで、技術の構成要素について、品質管理(QC)活動でよく用いられる4つのMに分類して解説します。

Man(人):作業者の熟練など個人的なスキル・組織構造

Machine(機械):製造に用いている機械や治具

Material(材料):製造に用いている素材や部品

Method(方法):製造条件や工程管理方法

機械やITツールはMachineに該当する部分であり、設備投資の根幹になります。しかし、これを入れただけでは競合他社よりも技術が優れているとは言えません。現場に導入して、技術者が何らかの方法を編み出して新規導入装置を活用していくことで、現場に多くのノウハウが蓄積されていきます。

このように単一の要素ではなく、要素と要素の組み合わせのところにこそ技術の肝となる部分が宿っているのです。

では、技術を磨くときに、どこから投資をすべきでしょうか?

そこで鍵になってくるのが人です。他社が真似したくても真似できないポイントでもあり、他の要素との橋渡しでもあるからです。

機械をマニュアルの通りに言われた通りに操作するだけでなく、「どうすればもっと品質良く、低コストになるか」を自分で考えて材料を選び、方法を試行錯誤し、機械を使いこなす人材こそ、技術の真髄と言えます。

設備投資をして最新型の機械を導入するだけでなく、そこからカタログスペック以上の成果をどのように出していくか。そこが技術開発のスタートです。優秀な機械で生産性よく仕事をこなしたとしても、それは機械の成果です。技術が機械頼みのままでは、やがて他社に追いつかれてしまいます。

人材育成も将来への投資と位置付けて、社員を活性化して挑戦を促していくのです。

  • 外部で開催される研修やセミナーに参加してもらう
  • 自由に実験・試作する時間を一定時間認める

社員が外部の研修やセミナーに行って新しい知識を獲得することは2つの意味で重要です。

1つは最新の知識の獲得です。常に新しい機械や材料で現状よりも優れているものを探索しておくことは、将来採用するときに必要な知識となります。

もう1つは社内の常識を再確認することです。外部の「一般的な」知識を得ることによって、社内レベルを外部の目でチェックすることができます。良い情報を教えてもらったと外部に教わることもあるでしょうが、ノウハウの中には「何で先生はそんな面倒なやり方をやっているのだろう?」と社内の方が進んでいる技術知識も存在します。

ずっと社内にいると井の中の蛙になってしまい、何が重要なポイントなのか客観的な判断がつかなくなります。新しい技術知識との交流は、社内にいる人材の活性化のためには不可欠なイベントと言えます。

また、機械や材料の新しい使い方・新しい組み合わせをどんどん試していくことで、新しい画期的な方法が生み出されていきます。過去に探索して見出した最も良い条件を現在使っているわけですから、このような試行錯誤は一見非効率のように見えるかもしれません。それでも、外部の技術や知識はどんどん新しくなっているので、取り込んで試しながら良い条件を探索することは重要です。

技術の要は人ですから、社内の技術者には新しいこと挑戦してもらいましょう。人への投資と設備投資がシンクロした時に、素晴らしい技術が生まれていくのです。

既存市場か?新規市場か? 技術を活用する先の見極め方

 

会議で「新製品を開発して市場を開拓すべきだ」と、新規事業が話題に取り上げられることはありませんか?従来の顧客が減っていき、売上が芳しくないと「新しい市場を求めて製品開発を行おう!」と言う機運が高まってくることもあるはずです。リーマンショックなど、大きな不況が来ると慌てて「新規市場開拓だ!」といきなり設備投資を決めてしまったり、強引な販売に走ってしまったりすると痛い目に遭ってしまいます。

ここで、事業環境について少し整理をしておきましょう。

まず、販売する製品には

  • 既存製品:すでに生産・販売している製品
  • 新規製品:これから開発する製品

の2種類があります。

 

次に、販売する顧客企業には

  • 既存市場:今まで付き合いのある顧客が所属する市場
  • 新規市場:自社が初めて参入する市場

の2種類があります。

2種類の製品と2種類の市場ですから、全部で4種類の組み合わせが出てきます。

1)既存製品を既存市場へ:市場浸透戦略

自社の製品を、まだ使っていない顧客に販売する戦略です。製品のことも、市場のことも十分知識が蓄えられているので、新規取引先開拓となります。

2)新規製品を既存市場へ:新商品戦略

今まで付き合いのある企業向けに、新しい製品を開発して販売する戦略です。深掘りしてヒアリングした顧客の問題点を解消する製品を作って売る形になります。

3)既存製品を新規市場へ:新市場

自社が長年扱ってきた製品を、全く異なる市場に販売する戦略です。従来の機械部品加工技術を生かして、医療器具やアクセサリー市場で販路を開拓する、などが該当します。

自社製品については詳しい一方で、顧客についてはまだ経験と知識が足りません。すぐに売上が立つものではありませんが、従来顧客とは別の産業の顧客を獲得できると売上が安定することにもなります。

4)新規製品を新規顧客へ:多角化

全く新しい製品を、新しい顧客へ販売する戦略です。

製品のことも顧客のこともこれから学んでいくことになるので、長期的な計画になるでしょう。

企業にとって主戦場となるのは既存製品を既存市場へ販売する部分です。ここが今期の売上を作るので、手を抜くわけにもいきません。

来期以降の売上を立てるためにどうするかを考えたとき、大きく分けて2つの方向性があります。

1つは製品技術の詳しい知識を武器に、それを必要とする顧客を探すアプローチです。図では右側に矢印が行き、新規市場を開拓する戦略となります。

もう1つは顧客知識の詳しさを武器に、新しい商品を開発するアプローチです。図では上側に矢印が行き、新商品を開発する戦略となります。

全く目的を持たずに闇雲に新製品を開発したり、新市場のため販促を行ったりするのは非常に効率が悪いものです。「こっちが良いんじゃないか!?」と当てずっぽうで進出先を決めるのも考えものです。新商品にせよ、新市場にせよ、ターゲットを絞って行動しなくてはなりません。

ここでも鍵になるのは、顧客の問題・課題をどれだけヒアリングして集めたかという「未来の注文書」のストックです。(02-高い技術と低い腰!専門製品の営業ノウハウ講座)

新市場開拓の場合、潜在顧客が持っている問題を自社製品で解決できることを技術的に検証した上で、アピールしていく必要があります。もちろん、既存市場の顧客が感じる便利さと表現が異なる可能性は大いにありますので、新しい市場の顧客に刺さるようなメッセージは別途考えなくてはなりません。

新商品開発の場合、顧客の持っている問題を解決する便利さを、製品を通じて提供できれば売れるわけです。その場合にはFABE分析を逆に行うような形になります。顧客に感じて欲しい便利さ(B:ベネフィット)を設定し、それを実現するために必要な機能の利点(A:アドバンテージ)を提案し、その利点を生み出すために必要な機能の特徴(F:フィーチャー)を設計するのです。

どちらにせよ、自社独自の技術で「顧客が感じる便利さ(ベネフィット)」を提供できるかどうかを見極めることが大切です。

そのためには、簡単なプロトタイプを作って見てもらって、フィードバックを得ていくと良いでしょう。じっくり考えても顧客の頭の中身は分かりません。しかし、実物を持ち込むとヒントが得られます。ヒントを得てプロトタイプのブラッシュアップを重ね、それから設備投資を決めて行きましょう。最初に設備投資をしてしまうと、設備ありきで考えることになってしまい、顧客の声よりも設備で出来ることに縛られてしまいます。

これから伸びる成長市場にはライバルも多いものです。しかし、顧客に便利さを提供できるかの勝負は新規参入も古株も変わりません。こだわりの技術を磨いて、挑戦していきましょう。

技術者がスペックで設備を選ぶと必ず失敗する!設備投資の基本のき

貴社のエンジニアが「この新製品、スペックが旧式より抜群に良いです!社長、ぜひ買ってください!」と言って来たとき、どう答えるでしょうか?

それが生産速度アップや、段取り替え時間の短縮など成果の分かりやすい項目であれば助かります。時間を基準にしてコスト削減効果を見積もれば設備投資の価値があるかどうか判断できます。

しかし、最小加工寸法・駆動ステージ精度といった「技術者にはたまらないけど、他の人には成果がよく分からない項目」の場合は買うべきかどうかの判断がつきません。

家電製品ならともかく、生産設備レベルの投資を、技術者が好むスペックで設備投資の是非を判断するのは大変危険です。

ここで、設備投資の基本について、アメリカの経営学者ジョエル・ディーンがまとめた4種類の分類法を紹介します。

1)取替投資 売上は変わらずコストが下がる

2)拡張投資 コストは変わらないが生産量が増える

3)製品開発・改良投資 新しい製品を生産する

4)戦略投資 基礎研究や公害防止など

 

1)については、「04-原価を低減して利益を増やす分析特集講座」で解説したコスト削減効果を見積もって、投資額と比較すれば判断できます。

2)についても、製品ごとの利益計算がきちんとできていれば、投資に対していくら利益が増えるかを計算することができるでしょう。

3)については、新製品の売上動向を読まなくてはなりません。「未来の注文書」を複数の企業から取り付けてあると売上予測の精度が高まっていきます。

このとき「年間売上高」と言った大きな数字で予測していると、「それくらいの売上なら行くんじゃないか?」という根拠が曖昧な楽観論が出てきます。必ず現実的にイメージできるように「週に何件の受注が必要か」「担当1人あたりで月にいくら売上なくてはいけないか」と言った数字に砕いて評価することが欠かせません。

4)については、数字で見積もることが難しい、新しい挑戦になります。冒頭のエンジニアの提案もここに入ることが多いです。

その場合は、その投資の先に具体的な顧客がいるかどうかを判断基準に添えると良いです。

最小加工寸法にこだわる技術者がいた時、彼の頭の中に小さく加工したいと願う具体的な顧客がいるのであれば、その投資には価値があるかもしれません。もちろん、最初から大型設備投資をするのではなく、小さく実験しながらステップを踏んで順番に規模を大きくしていきましょう。

  • その製品を、その技術を待っている顧客がいるか?
  • その顧客待っている顧客は複数の会社にいるか?
  • 顧客が感じる便利さ(ベネフィット)にどう貢献するか?
  • そう言った観点を参考にしてください。

まとめ

  • 人材教育や育成にお金をかけ、挑戦を促す。
  • 製品を開発するときは、FAB分析を顧客が感じる便利さ(ベネフィット)から出発して製品の特徴(フィーチャー)まで遡るように回していく。
  • 「儲かるか」もしくは、顧客に便利さを提供して「将来儲かるか」を判断した上で投資を判断する。技術的なスペックだけでは決めない。

 

PAGE TOP