04-生産力

原価を低減して利益を増やす分析特集講座:売るべき製品・売っちゃいけない製品

「売上を伸ばしたい!」「我が社の製品をたくさん買ってもらいたい!」

これは経営者に共通する願いですし、自社製品をたくさん使って役に立ってもらえるなら、それはとても素晴らしいことです。

しかし、ここには落とし穴が潜んでいるのです。

例えば1個あたり部品の仕入れに80円、加工して組み立てるために40円かかる製品を考えます。原価が1個あたり合計120円掛かるのに、この製品の売値が100円だとしたらどうなるでしょう?

1個売るたびに20円の赤字になりますね。この商品の注文がどんどん入ってきて、売上が伸びたとしても経営者にとっては嬉しくない事態です。

最終的に必要なのは利益ですから、たくさん売ることによって、利益も増える「儲かる製品」を選ばなくてはなりません。売値から原価を引き算して得られる「粗利益」が大きい製品を選ぶのです。

しかしながら、製品ごとの原価把握が面倒で

  • 全体の売り上げに占める割合が大きい主力製品を売る
  • 最も高値で売れる製品を売る
  • 長年作っている看板製品を売る

といった選び方をしていないでしょうか?

勘や経験ではなく、原価という数字で製品ごとに把握しておくことが大切です。原価が分からなければ利益も計算できません。また、この先原価を低減して利益を増やす活動をするにしても、今の原価を計測できていないのであれば、低減活動のPDCAも思うようには回りません。数字に基づかない精神論を頼りにした原価低減活動は、往々にして現場を疲弊させてしまいます。

とはいえ、原価を把握することは重要と知りつつも、製品ごとの原価を求めるのは、案外骨の折れる作業です。

製品ごとに部品表がしっかり出来ていて、工程や担当者が分かれている場合は仕入れ伝票を集計することで原価も簡単に求まるでしょう。

しかし、実際には

  • 生産設備を共有している
  • まとめて仕入れた同じ材料を使っている
  • 作業員が共通している

などの事情で、製品ごとにピタッと割り振ることが難しいことが多々あります。結局、製品ごとの原価は分からずに工場全体を合計した原価だけを見ているケースも多いものです。

元データが工場全体の合計数字しかないとき、製品別の原価を算出するには何らかの基準に応じて割り振らなくてはなりません。この場合に「売上高に応じて配分」としてしまうと、現場の実態と食い違った原価が出来上がってしまいます。

例えば、製品A, 製品B, 製品Cの3種類の製品があって、それぞれ同じ売上高(100)だったとします。材料や作業員が共通しているので、製品ごとに原価を割り振らなくてはなりません。そこで、工場全体の原価を売上高に応じてA,B,Cに均等に割り振って原価(70)を求めたとしましょう。

3種類の製品の粗利益はそれぞれ売上から原価を引き算して「100-70=30」と求まります。どの製品を売っても粗利益30が手に入るという計算ですから、均等に営業に力を入れるでしょう。

しかし、実際には製品Aは歩留まりが悪く作業員の手直しで120の原価になっていました。一方で、製品Bは60,製品Cは非常に安く原価の費用で生産できていたのです。

製品B, 製品Cの注文が来れば儲かりますが、製品Aの注文が殺到した日にはこの企業は地獄を見てしまいます。

工場全体でどんぶり集計していた原価を、製品ごとに割り振っていかなくてはなりません。しかし、いきなり精度の高い原価を求めようと細かく集計しようとすると心が折れてしまいます。そこで、まずは現実に近づくように今よりも1ステップ精度を高める工夫からスタートすることをオススメします。

現場作業員の人件費については、製品ごとに自分が作業に携わった時間をヒアリングして、比率を求めましょう。例えば1週間(40時間)の間で、製品Aに20時間、製品B14時間、製品Cに6時間作業をしていた場合、原価に含まれる現場作業員の人件費の割り振りは20:14:6の比率と定めるのです。

同様に、材料費は使用量に、装置の減価償却費は装置の使用時間に応じて割り振りを決定しましょう。

最初の頃は記録も少なく精度は低いかもしれませんが、「何の記録を取れば原価を求める精度が上がるか?」「現実に即した原価になるか?」を意識しながらデータを取り溜めていくと、だんだんと精度が高まってくるものです。

こだわりの技術の結晶が高単価商品になったとしても、売値よりも原価が高かったのでは話になりません。きちんと製品ごとに原価を出して、粗利益を計算してみましょう。

元手ゼロの誤解!ちょっとしたオマケが降り積もる悲劇

「これくらい、ちょっとオマケしてよ」

顧客からこのようなリクエストが来る時もあるでしょう。オマケのために何かを外部から購入する場合や、生産設備を使う場合など、コストが発生すると感じたときは、そうそう簡単には応じられません。

しかし、パソコン上でデータをまとめる、プレゼン用のフォーマットにしたファイルを作ってあげるといった作業のように、担当者が実行できる作業は「元手が掛からない」と感じて、気軽に引き受けてしまいがちです。

これは一見、外部にお金が出て行くことがありませんから、元手ゼロのように感じてしまうかもしれません。しかし、実際には「社員の時間」という非常に貴重な資源を使ってサービスを提供しているのです。

1件1件のオマケは小さくても、それが積み重なれば無視できない金額に膨れ上がります。まさに塵も積もれば山となる効果。

まず、社員が作業をするのであれば、時間換算で原価を見積もっておきましょう。年収600万円、年間250営業日で1日8時間労働とすると時給3,000円です。1分あたり50円。この辺りはラフな計算には使いやすい数字です。

当然、時間換算で人件費分のお金を頂いても、企業にとっては利益になりません。その社員は、無料のオマケ対応をしている時間で別の仕事をしていれば、売上を増やせたはずと考えることができます。

売上高÷(社員数×250日×8時間)で、社員1時間あたりの売上高を算出することができます。250日の部分は各企業の年間営業日数が入ります。

時間換算の原価を下限に、時間換算の売上高を上限として、ここからオマケの原価を見積もって見てください。安易に引き受ける大変さが伝わってくるはずです。

そもそも「これもやって欲しい」ということは、現時点では提供していないが、具体的で明確なリクエストが寄せられていることです。オマケを安易に受けるとコスト高を招きますが、断ってばかりでは顧客の期待を裏切ってしまいますし、せっかく指摘してくれている製品の改善ポイントを見過ごすことにもなります。

なんども要請されるようであれば、オマケの追加サービスを標準仕様の中に組み込んで、全体として作業の効率化を図って行くことも有効でしょう。それに、他の顧客も潜在的には同様の要望を持っているかもしれません。何も要請してこない他の顧客に、あなたからサービスを提案する形にすると、「気が利いたサービスをしてくれる会社だ」と喜ばれることにもなるでしょう。

社内改善でも客先提案でも使える!業務コスト削減の簡単計算術

ここではコスト削減効果を簡単に計算する方法を解説します。

社内で原価を低減させる活動をするときに、効果を素早く見積もることができれば、議論が具体化していきます。

例えば年間のライセンス料100万円の業務用ソフトウェアについて、導入するかどうか検討しているシーンを考えましょう。「100万円は高いなー」「デモの結果は便利そうだけどなぁ」と思っているだけでは、導入すべきか判断がつきません。そこで、導入費用の金額と比べるために見込まれる成果も金額に換算することが必要です。

100万円のソフトを入れることで、人件費は125万円削減できるという見積もりです。これなら、導入する価値がありそうだと判断できます。

残業が定常的に発生している場合はこの計算でコスト削減額を見積もることができます。残業があまり発生しない企業の場合では、削減した時間を他の仕事に当てて売上を立てれば、期待できる効果はもっと大きくなるはずです。

次に、導入費用1億円の生産設備の使用料を、減価償却費から見積もってみます。減価償却の計算に必要な耐用年数は装置によって異なりますが、推測で計算するときは10年とするのが簡単です。自社の場合は経理担当に確認するのが良いでしょう。

1年あたりの減価償却費を求めると、導入費用を耐用年数で割り算すれば良いので1億円÷10年=1,000万円 となります。

これで、装置の減価償却費(いわゆる装置の使用料)を見積もることができましたので、あとは時給換算と同じです。「装置を有効利用する新材料の提案」「装置の稼働時間を伸ばす段取り替え短縮策」などの効果を検討するために、年間何時間の装置時間を捻出することができるかという観点で計算すれば良いのです。

人と設備の数字が求まれば、製品を作る作業時間を掛け算して、材料費を加えることで、大まかに製造コストを見積もることができるのです。

これは、社内の業務効率化の効果を見積もる時や顧客企業に対してコスト削減効果を提案する時などに非常に有効です。

社内の改善策や設備投資策を検討する場合、ある計画では「労働時間10%削減」とあり、他の計画では「加工時間20%削減可能!」となっていると、どちらを優先すべきか分かりません。仕事の上では時間を基準にして金額換算して見積もるのが最も素早いアプローチだと思います。

企業を訪問した時に、設備の値段や稼働の様子を聞くと、このようにコストを計算することができるのです。ぜひ訪問した時にはこのようなお話を聞いてみてください。

まとめ

  • 製品ごとに原価を求めておく。実務に即した形で割り振るのがコツ。いきなり細かくデータを取るのではなく、少しずつ進める。
  • オマケの追加サービスのコストを把握しておき、必要なものは横展開する。
  • 時給や設備導入費用から時間あたりのコストを算出しておく。時間さえわかればコストはすぐに計算できる。

 

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