ティファニーのリスクヘッジ提案の妙

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気がついたらもう12月。至る所でイルミネーションが輝き、デコレーション豊かなツリーが現れ、世の中すっかりクリスマスモード。

夜の街を歩くと、このような煌びやかな風景が目に飛び込んで来ますね。

2012年のクリスマス仕様のガンダム@お台場


そんなクリスマス商戦の中、ティファニーが「おねだりサービス」を実装して、話題となりました。

http://www.tiffany.co.jp

公式ホームページより引用

オンラインストアで商品を選び、「おねだりする」をクリックして相手のメールアドレスなどを入力。

すると、ティファニーから相手の元に「クリスマスプレゼントのヒントをお届けしました」という商品案内の粋なメールが届くというシステムになっています。

トップページに例として上がっているボールペンダントは¥206,280!

ねだるにも、ねだられるにもとっても勇気が必要そうな感じですね。


このシステムが話題になった時、男性陣からは「恐ろしい」と言ったリアクションがあったわけですが・・・私はこのおねだりシステムはお互いのリスク低減に貢献していて、とても面白いと感じたのです。

 

例えばこんな状況を考えてみます。

選択肢1:確実に100万円もらえる

選択肢2:50%の確率で200万円もらえるが、50%の確率でゼロ

この2つの選択肢が提案された時、あなたはどちらを選ぶでしょうか?

 

冒険しないのであれば確実な選択肢1ですね。選択肢2では当たれば200万円は非常に魅力的。確率を計算すれば、100万円もらえることが期待できます。

 

とは言うても、おそらくあなたは選択肢1を選んだと思います。

せっかくのチャンスがあるのに、コインの裏表で天国と地獄が決まる選択肢は避けたいですよね。確実にもらえるものをもらって得しようと言う心理は誰にも共通するものです。

選択肢2では、上は200万円から下はゼロまで取り得る値が変化しますから、それだけリスクが高いと言えます。


今回、ティファニーが実装したおねだりシステムで顧客に提供しているのは、まさに「リスクのない確実なプレゼント提案」です。

「本来プレゼントとは、相手が喜ぶことを真剣に考えていろんな選択肢の中から試行錯誤して選ぶべき。そのプロセス自体も大切なんだ!」そのような考え方も当然あるでしょう。この考え方の場合、自分の選択肢と相手の反応に広い幅を持つことになります。すなわちリスクが高い状態なのです。

 

日本人は従来から自己主張が弱いとも言われますし、欲しいものを明言するのは「お行儀が悪い」「はしたない」とご両親から教えられた方も多いでしょう。

そのためか「プレゼントに何が欲しい?」と質問しても「なんでも嬉しいよ」などと答えて本音を示さないことも多いもの。

 

このリスクが高い状態は、プレゼントを贈る当事者としては困ったものですよね。

相手がお店で足を止めて商品を見ていると「これが欲しいのかな」とこっそりプレゼント候補に入れておくかもしれません。

しかし、相手はその商品が珍しいから見ていただけで、自分が欲しいとは微塵も思ってないというトラップも潜んでいたりします。

また、本当に欲しいものはクリスマス前にさっさと冬のボーナスで買ってしまうと言う事態も起こり得ます。全くもって油断なりません。

デート中は相手にスマートグラスをつけてもらって、見ている画像から欲しがっている商品候補を洗い出して欲しいと言うニーズがあるかもしれません。


このようなプレゼント選びに掛ける時間は「それこそが醍醐味だ」という意見の方にとっては楽しい時間かもしれません。一方で、プレゼントに悩む時間をコストと考える人も多いのではないでしょうか?

 

今回のティファニーの提案は誰が入力したか丸分かりなのでジョークの要素もあるかもしれません。

しかし、別の見方をすれば、プレゼントする側の取引費用を削減した上で、リスクフリー&必ず満足を得られる選択肢を提供しているとも考えられるのです。これはビジネスモデルのイノベーションと考えても良いでしょう。

「今まで本音では言いたかったけど、言うのをためらっていた」と言う方の背中を押してリクエストを送ってもらうことで、プレゼントのハードルが具体化すると言うのは、お互いにとって良いことなのかもしれません。


もっとも「リスクが無い」と言うことは「サプライズも無い」と言うことでもあります。おねだりに応えることで合格基準点はクリアしているはず。そこで終わらせずにほんのちょっとしたプチギフトでも用意しておけば、安心な土台をキープした上で冒険することもできるのでは?と感じますね。

テクノロジーを駆使して今まで忖度してきたことを具現化して解決する。

心理面のハードルはありますが、潜在的なニーズに応えていけば市場が広がるきっかけになるかもしれませんね。

ティファニーのサイトを見て、そんなことを考えていました。

 

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