いい価格交渉は、いい○○○から、つくる。駆け引きに走る前にやるべきこと

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儲かるための第一歩。

それは、自社の製品を適正な価格で販売することです。

自社のこだわりの技術を使って開発した製品ですから、安く買い叩かれてしまうのは財政面だけでなく心理面でも悲しいもの。また、原材料の値段や、運送費・光熱費などの価格が上がった時には、自社の製品価格に反映させないと利益がみるみる減っていってしまいます。

さらに、支払い期日も非常に重要な要素です。せっかくお客様が買ってくれたのに、入金されるのが半年先ともなると、日々の資金繰りがきつくなることに。

顧客企業に対して、適切な値段・支払い時期にしてもらうように交渉をしなくてはなりません。


ここで「交渉」と聞くと、弁護士や外交官、海外ビジネスパーソンが登場するドラマの1シーンを思い出したりしませんか?

ハッタリ(ブラフ)をぶつけたり、大げさな演説パフォーマンスを繰り広げたり、休憩時間を挟んで駆け引きをしたり・・・

しかし、巷で売られているプロの交渉マニュアルでトーク術を磨く前に、必ずやっておくべきポイントがあるのです。このコラムでは、下請け企業が親事業者に対して行う価格交渉の基本を解説していきます。


私も営業担当時代に取引条件の交渉には苦労しました。

  • とにかく急いでいるけど、注文書を出す事務手続きをしていたら間に合わない。注文書は必ず出すから、先に工程を進めてくれ。
  • 毎年最低2%ずつコストダウンしてくれないと、私(調達)の目標が達成できないから、コストダウンするようにしてね。
  • この請求書の値段は高過ぎない?値引きした見積書を今日中に出しなおして。値引き額を増やすんじゃなくて、定価を書き換えるように。
  • 支払い日を今の条件からさらに2ヶ月伸ばしてよ。うちも苦しくてね。

特に取引金額の大きな顧客になると、値引きや支払い延期などの要請を断るのが怖くて怖くて。

相手が怒って取引中止を言い出したり、競合とのコンペをやることになったりしたらどうしよう?と色んな不安が付きまといます。

「5%くらい値引きしてよ」と気軽に言ってくれますが、予算未達5%を取り返す難しさは大変なものです。2%未達であってもしんどいのに。

買う・買わないの判断をするのは顧客企業です。そのため、顧客企業の立場が上と考えて、取引するためには要請に従わざるを得ないと考えることが多いものです。

しかし、本来ビジネスのやり取りは上下ではなくて、お互いの持っている財産を対等に交換するものです。

「私たちは頂いた値段以上の価値を顧客に提供している」という強い思いを込めて、技術を盛り込んだ製品を適正な価格で販売する心構えを持ちましょう。このマインドセットが崩れてしまうと、交渉の準備もままなりません。


実りある価格交渉のために必要なこと。

交渉の席での演技力でもなければ、場を和ます小洒落たジョークでもありません。

それは・・・「データ」です。

データに基づいて具体的に数字で説明することで、説得力のある主張をすることができます。逆にこれがないと「なぜそうなるのか?」と返された時にあやふやな回答しかできません。また「この数字ならどうか?」と条件調整になった時に自社が有利かどうかの判断もできなくなります。

 

価格交渉のために用意しておくべきデータには2種類あります。

まず1つ目が「原価の算出根拠」です。

  • 取引先から来た値引きの要請になぜ応じられないか?
  • 原材料など仕入れ価格の上昇や人件費・輸送費の問題など、経費がどのようになっているか?
  • そう言った製造原価をしっかりとデータで持っておくことが欠かせません。

 

顧客:次回の取引から10%引き下げてよ

自社:いやー困りますよーどうか、私に免じて値引きは勘弁してくださいよ〜

顧客:じゃあ、10%と0%の間を取って5%で!これなら大丈夫だよね?

自社:まぁ、5%なら10%よりはマシですけど・・・

と、なんとなくの交渉をやっていては、言葉と感情でビジネスチャンスを逃してしまっています。そもそも製品の利益率が5%以下だったら赤字取引です。値引きの話を受けるどころか、むしろ値上げ交渉をしなくてはなりません。

 

顧客:次回の取引から10%引き下げてよ

自社:1ロットあたりの原価はこうなってます。仕入れ値と輸送費が昨年より20%も上がっていて、とても値引きできる状況ではありません。

顧客:確かに。これでは10%下げると赤字取引だね。

自社:今までやって来た分散納品を一括納品にさせてもらえませんか?

・・・

と、データを見ながら数字に基づいて話を進めれば、お互いにとって利益のある地点に着地することができます。

数字を全く使わずに判断していては、忙しく働いているのに儲からないという負のサイクルに入ってしまいます。

また、取引先に対しても「これだけ値引きしても利益を確保できているなら、まだ大丈夫だろう。次回も協力してもらおう」という変な安心感を与えてしまいます。

原価のデータは機密事項であり、外部に漏らしてはいけない!と考えがちです。しかし、取引先に腹を割って事情を説明し、交渉をまとめるためには欠かせないデータなのです。

その最大の理由は・・・値引き要請をして来る人の立ち位置です。

会社の調達担当が窓口となって取引条件の見直しや価格交渉を要請して来ることが多いでしょう。その時に「なぜ値引きに応じられないか?」を具体的に説明できないと、調達担当の人が困ってしまうのです。

 

調達:社長から「値引きは勘弁してくださいよ〜」と泣きつかれまして・・・

上司:何%だったら協力してもらえるのかね?

調達:とにかく値引きはやめてくれと。

上司:製造原価はどの程度だ?

調達:粗利が減って困ると言ってましたが、数字までは。

上司:我が社でコストダウンに協力できることは?

調達:電気代が上がって苦しいとは言ってましたが・・・

上司:あのなぁ。子供の使いじゃないんだから、我が社の状況を伝えて、きちんと説得して協力してもらいなさい!

 

のらりくらりでその場はしのげるかもしれません。しかし、交渉に来た調達担当は上司に対して交渉結果を説明する責任を負っています。いつまでもそれが通じるわけではないのです。

はっきりと根拠を示さない場合は、顧客企業に対しても負荷をかけてしまっているのです。こうすると、顧客にとっては対応に手間がかかる(コストの高い)取引先と認識されてしまいます。


2つ目に用意しておくデータは「取引条件・交渉経緯の記録」です。

取引条件自体は個別の見積書・請求書に記載されているはずです。どのような経緯でそのような取引金額になったかの経緯を記録したデータを持っておくことが重要です。

よくトラブルになるのは、ロットサイズに合わせて取引単価を設定したはずなのに、小さいロットでも同じ単価を要求して来るということです。

顧客企業の調達担当が交代になった時、新しい担当は以前の見積書を参考にして要請して来ることがあります。見積書に単価と個数と合計金額が乗っていれば、それを参考にするのは当然です。このような時に堂々と適正価格を主張するためにも、以前の担当と交渉して合意に至った記録があれば、スムーズに話を進めることができます。

顧客企業が円高に苦しんでいて、為替の水準や景気が良くなるまでの期間限定で値引きに応じていた時などは特に注意が必要です。景気が良くなったので値段を引き上げてもらいたいと要請しても、交渉経緯の記録が残っていないと悲惨です。「時期が来たら元の値段に戻すと言った覚えはない」というご無体な発言も飛び出します。言った・言わないの水掛け論になると、担当者との人間関係がこじれてしまいます。折り合いがつかないと「値引き協力に応じてくれて感謝している。この後もこの価格でお願いしたい」と宣言され、価格交渉を1からスタートする羽目に・・・

価格交渉の場合は必ず記録を取るようにしましょう。

  • 日時 年月日 開始時刻〜終了時刻
  • 場所 自社会議室・取引先打ち合わせ室
  • 作成者 記録者の名前
  • 参加者 自社・取引先で会議に出席した社員の名前
  • 合意事項 お互いが合意した点
  • 意見交換 経営環境に関する情報(景気・売れ行きなど)、お互いの主張・発言

企業にとってお金は大切なものです。そしてトラブルの元もだいたいお金です。

しっかりと記録してデータを引き出せるように準備しておきましょう。

 


特に大手企業の下請けとなっている中小企業にとっては、価格交渉は死活問題です。

中小企業庁の委託事業として「下請かけこみ寺」事業があります。

代金の未払い・取引中止・代金の減額といったトラブルに対応する時に無料で利用できるサービスがあるのです。2時間の価格交渉セミナーや、1回6時間で3回まで無料で個別相談が利用可能となっていますので、お困りの際は下請かけこみ寺までご連絡ください。

下請法とは、資本金の大きな発注企業が仕事を受ける中小企業に対し買いたたきをしないように指導するための法律です。本来は独占禁止法で優越的地位の濫用禁止をうたっています。しかし裁判になっても優越的地位にあったかどうかの立証に手間がかかり、中小企業にとってはとても背負えない負荷でした。そこで、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が制定され、取引する企業の資本金と取引内容で親事業者・下請事業者が決定されるようになりました。

この法律によって、親事業者には4つの義務と11の禁止行為が定められています。

4つの義務

  1. 書面の交付義務:必要事項を全て記載した注文書を出す
  2. 書類作成・保存義務:取引に関する書類を作成し、2年間保管する
  3. 下請代金の支払い期日を定める義務:納品後60日以内に支払う
  4. 遅延利息の支払い義務:納品後60日を過ぎたらその分の利息を支払う

 

11の禁止行為

  1. 受領拒否の禁止:下請け事業者に責任がないのに授業を拒否すること
  2. 下請け代金の支払い遅延の禁止:支払い期日までに支払わないこと
  3. 下請け代金の減額の禁止:下請け事業者に責任がないのに、発注した金額から減額すること
  4. 返品の禁止:下請け事業者に責任がないのに、受領後に返品すること
  5. 買いたたきの禁止:著しく低い下請け代金を不当に定めること
  6. 物の購入強制・役務の利用強制の禁止:正当な理由なく親事業者が指定する物を買ったりサービスを受けたりすることを強制すること
  7. 報復措置の禁止:親事業者の違反行為を知らせたことを理由に、不利益な扱いをすること
  8. 有償支給原材料などの対価の早期決済の禁止:親事業者が有償で支給する原材料の支払いを下請け代金の支払いよりも先に支払わせること
  9. 割引困難な手形の交付の禁止:120日超など割引が困難な長期の手形を交付すること
  10. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止:下請事業者に金銭や役務を不当に提供させること
  11. 不当な支給内容の変更およびやり直しの禁止:下請け事業者に責任がないのに、親事業者が費用負担せずに変更ややり直しをさせること

 

「取引先がこれらの義務を果たしていないのでは?」「自社がされているのは禁止行為かも?」と思ったときには、下請かけこみ寺に相談してみましょう。我々専門家が、取引・価格交渉がうまく行くようにサポートを提供しています!

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